妄想と技術

id:shinimai:20030824さんで見た言葉。

妄想が我々の技術を上回ってる感じ
という指摘を受けた我々ノーザンショックですが、それは私にとって正しいロックのあり方です。
エルビスなどのロック&ロールなどが白人が黒人音楽を無闇!?に真似しようとしたり、モッズたちのルーツがノーザンソウルであるように、ロックはその始原から「できないことを無理してやる」精神を持っていた!

これは全くその通りと思う。というか、自分が『少年は荒野をめざす』(吉野朔実)を読んだ時の感想がまさにそうで、あの作品は作者の思想が冒頭からすでにその時の(もしくは今でも)漫画表現の限界を超えていて、数ページごとにストーリーからイメージが溢れ「終わり」の予感を画面に漲らせる。物語の淵を二度三度と何とかやり過ごしながらも、結局は3巻辺りで不可能となり、思想は失速してしまう。がしかしラストで、作者は中絶したイメージを再度ストーリーに返そうとするのだ。中盤以降の沈没が逆に全体を際立たせる、奇妙な作品。
思えば自分は事あるごとに「完成した作品より進化する作品」と思ってたのだけれど、上のような記述に素直に頷いてしまうのは「進化」が億万の無謀な変異とそれによる絶滅の先にあるからなんだろう。もう1つ思ってたのは「傑作とは面白い作品ではなくて、『こんな物がまさか面白かったとは!』と唖然とさせる作品」というので、この辺も同じ根があるのかも。