「魔法陣グルグル」(4)/衛藤ヒロユキインタビュー記事

id:sayuk:20031022#p1で触れた「ぱふ」95年12月号の「小特集 魔法陣グルグル」が見つかったので、衛藤ヒロユキのインタビューのうち興味深い所をピックアップしてみます。

中学〜高校時代は全然マンガを読まなかったんだけど、高校のときに大島弓子の作品に出会って、改めてマンガに興味を引かれました。少女マンガにハマって、現在に至る(笑)。
――大学の頃はどのような作品を書いていたのですか?
衛藤 雰囲気的に「ガロ」っぽい作品でしたね。「宝島」とかに持ち込んだりもしていました。その頃って、いわゆる漫画マニアだったんですけど、今から考えてみると、漫画というものがよくわかっていなかったと思います。
漫画から遠ざかっていたら、変なこだわりがなくなっちゃった。たとえ漫画界で一番面白い傑作を描いたとしても、その日がドラクエの発売日なら(笑)読んでくれないんです。かっこいいキャラが描けたとして、スケーターのTシャツに描いてあるモンスターとどっちがかっこいいか、と比べられます。ゲームでも音楽でもジャンルは関係なくて、とにかく、奈にか面白いことをやるのが大切だというのが、いろんな業界を回って得た答えです。マンガでは、まずはイメージ作るのが商売だと僕は考えてます。RPGでの意味でなく現代最強の「モンスター」、イメージの怪物を作れたら…と思いますね。
――「魔法陣グルグル」という作品を思いついたきっかけは?
衛藤 勝手に「ドラクエ以降」という区切りを想定しちゃって、ドラクエ以降のマンガっていうのはどんなのかな、という感じで概要を決めました。ドラクエ以降、子どもの感性は変わり、マンガも進化してまったく新しい文化が…って、もう僕の頭の中では理想モード(笑)。「TVゲーム的な漫画」とよく言われてて、あのウインドウやレベル表示はモロですが、本当はTVによって開かれた何かを突き詰めていきたいんです。たとえば、面白いこと、気持ちのいいことは実はやたらとあるんだということ…。それと、たとえばドラクエで、フィールドや戦闘シーンがパッと切り替わる、あのモザイク感。ぼくは大河ドラマが嫌いで、理想はあのモザイク感なんです。一コマ一コマが面白くて、続けて読んでも面白いという…。最後は、ファンタジーの復活ですね。これは心して扱わないと、単なる歴史ロマンや、ただのヒーローものになってしまうけど、今のところ非常に有効な手段だと思います。
グルグル自体は、スタイルとしては最強なんじゃないかと思うようになりました。できればほかの人にやってもらいたい(笑)。どうしても成功させたいですから…。
あと最近、自分のスタンスは、「かっこいい」と「かわいい」の間とか、そういうところにあるんじゃないかな、と考えてます。いわゆる「ネタ」もそうなんですが、単独で立てるものなんてほとんどない。必ず何かと何かの間に、ギャグや、かっこよさが派生するんです。ネタを「思いつく」なんてありえません。単純に「かっこいい」「かわいい」の雛形にこだわらないで、「かわいいこわい」とか(笑)、そういう感覚を開拓していきたいなと思ってます。そもそもグルグルは、なにかにつけて「間にあるもの」を描いてしまうんです。
キャラクターの名前は(中略)“変な響きの言葉”をまとめたノートがあって、それを見ながら考えたりもします。そのノートだけ見ると、頭おかしいんじゃないかと思われたりするかもしれないですね(笑)。

大島弓子」「モザイク感」「かわいいこわい」あたりがポイント? 変な響きノートって天野天街みたいだ。