コスメ

男性としてコスメについて語るのには、いくつかの限界があると思っています(限界は「やおい」についてもあるとは思いますが)。
まず、基本的なコスメ知識からさらってゆきたいと考えています。あくまで学ぶ過程なので、知っている人には何をいまさらな内容かもしれません。また、実際のユーザーではなく、男性が女性誌やその他の言説から再構成して捉えてゆく過程なので、認識の差が多少なりとも発生すると思います(逆にその辺りが面白いかもと思ってます)。
コスメ用品やブランド名は並べるだけで済みますし、ブランドがどういう位置付けにあるかも販売や広告戦略を見ればなんとか追い付けますが、実際の評価となるとやはりユーザーでないと分かりにくく、このあたりが第一の限界となるでしょう。たくさんのアーティスト名を年表やジャンル分けの中に置くことはできるけど、同時代でその音楽を浴びてきた人でないと評価は正当にできない(それが正しいかはともかく、そういう引け目を感じてしまう)のと同じ状況かと。
さらには、女性誌のコスメに関する言説からコスメの面白さを切り取ってゆく段階に入るわけですが、それをどうしても分析的に捉えてしまう所が第二の限界と思います。例えばコスメに関する記述には多分に擬似科学的、さらには心理学的な要素が入ってくるのですが、それを単純に外の視点から捉えてしまってよいものか。「mina」2001年No.9*1の特集は「幸せ目標別『開運ネイル』66のおまじない」で、それぞれのネイルに付けられたキャプションはたとえばこんな感じ。

  1. 甘めピンク+クールめブルー:超おしゃれな男のコと出会える! 流行に敏感でセンス抜群の男のコじゃなきゃ!って思ってるなら、情報をいち早くキャッチする色、ブルーづかいが出会いへの早道だよ。
  2. 告白する勇気が出るオレンジの水玉:大好きって気持ちを彼に伝えたいのに、なかなかいい出せない。そんなちょっぴり内気なコは、D(筆者注:トニー&ティナ ビブレーショナルネールペイント)でオレンジ色の水玉を描いて。告白する勇気と最高のタイミングをくれるよ。
  3. ゴールドベース+白の水玉模様:会話のセンスに磨きがかかる! 話しじょうずになりたいなら、センスアップのゴールドをベースに。人間関係をうまくいかせる白で、会話の弾む水玉を。
  4. 赤ベース+イエローの蝶々:もっと自分を生かせる仕事が見つかる! 転職を考えてるなら、イエローの蝶々をプラス。イエローと蝶々には、理想の自分になれる効果が!(中略)シールは指1〜2本だけに貼ってもOK。
  5. ピンクベース+ハートと星:本命の男のコを一人に絞れる!:気になる2人の男のコのどっちを本命にしようか迷ってるなら、ピンクの地に男のコたちをあらわすハート2つと、決断力のつく赤の星を。

5見て「ネイルとかに頼らんで自分で選べ!」とか思いたくなるのも確かかもしれないけど、「たかだか色使いでステキな彼氏に出会えたり恋を進展させたり給料上がったり才能が開花したりするわけないじゃん」って捉え方でほんとうに良いものなのか。そもそも、オンナノコがみんなこういう特集をまともに受け止めてるとも限らないのだけど、それにしてもたとえば「占い」や「擬似科学」を非科学的とするのは結局は「外の視点」からの「分析的」な手付きで、ちょうどファンタジー小説を読んでる人に「そんな夢物語本気で信じてるの?」と言っちゃうような野暮ったさを感じる(あるいは、「真実」と「現実」を混同する類いの考え方を。まあ野暮ったさでいったらこの日記も同じくらいなんだけど)。
では僕の今のところのだいたいの印象を正直に書いてみると、「この中からかわいいネイル選んでみて、そしたらこんな効果があるみたいだから話半分に期待してみる」か「なんとなくの今の気持ちで選んでみたらかわいいネイルアートだったので、せっかくだから今日はそれにしてみる」みたいな感じでこの記事を使ってるのかなあ(そうだとしたら楽しそう)というものなんだけど、それがどのくらい「実際のユーザー」に近い(あるいは全然違ってる)ものなのか。(そもそも、オトコノコの「机上コスメフリーク」はオンナノコをトレースしなきゃいけないの? 分析と理解と共感と共存と、どの「communication=confusion」をこの日記は目的とするのでしょーか?)
何十年も前から永遠に「オンナノコの気持ち、はてな」してるのはご自由にって感じだけど(いまでもPOPEYEとnon-noにはかわるがわるそういう特集載るしね)、そういう「限界」をどうにかして超えよう(理解しようという意味じゃなくて!)、というのがこの日記(close/cross, confusion is sex)のテーマ(たぶん)。そんなわけで、まずはコスメフリークになるのが目標なのです。
あととりあえず教科書はあいかわももこ『コスメの魔法』!

*1:この号には18きっぷで熊本まで行く企画(鉄特集?)とか載っててステキ。