「日本女性文学大事典」市古夏生・菅聡子 編

日本女性文学大事典

日本女性文学大事典

時代とジャンルを超え、女性文学の軌跡と新たな潮流を収めた文学事典。小説、詩歌からエンターテインメントまで、幅広い分野における古代から現代までの女性作家600名の人と作品を、総勢128名の執筆者が紹介する。

買っちゃいました。
中古で約1万。新品だと16800円。新品で買えって怒られそうですが。
今日届いたばかりなんで全然中身を読んでないのですが、ぱっと見の印象だけ紹介してみます。
まずはみんなが知りたい「載ってる作家・載ってない作家」
(あ、自分がよく読むのが戦後特に80年代以降の作家(小説)ばかりなので、それより前の作家はあまり挙げません。でも古い作家ほどちゃんとカバーしている気がします。明治以前の作家や歌人俳人も載ってるんですが専門外なのですみません)

載ってる(区分けは超適当です)

載ってない

  • 少女小説:上以外の作家はたぶん載ってません。前田珠子桑原水菜若木未生今野緒雪も…。その代わりに、事典以外の論考部分に「少女小説の水脈」という文があるけど、ちょっと全体像を語るには短すぎる論考のように思う。
  • BL:載ってません(あえていうなら栗本薫)。秋月こおも尾鮭あさみも…。前記の論考でちょろっと触れているだけ。
  • ライトノベル:載ってないですねー。桜庭一樹…。ていうかこのあたりは、作者の性別をいちいち確認するのが面倒なので載せてないのかも。
  • ミステリ:ぱっと考えて載ってない重要な作家が思い浮かばないので、それなりに揃ってる気はします。もっと詳しい人には突っ込みどころがあるかもしれませんが…。
  • SF・ファンタジー:殿谷みな子が載ってるなら鈴木いづみも欲しいかなあ。あと谷山浩子とか寮美千子を個人的には入れて欲しかった。あとはファンタジーノベル大賞作家かなあ。
  • 児童文学:昔の作家は多いけど最近の作家はちょっと少なすぎ。森絵都あさのあつこあたりは入れても…。
  • 純文学:芥川賞以外の作家は完全に趣味になってしまいますが、堀田あけみ・篠原一あたりは欲しかったかも。

SF作家のラインナップとかを見ると、昔国文学解釈と鑑賞の別冊で「女性作家の新流」(1991)という本が出てたんですがその影響が強いように思います。あと、こっちは読んでないけどhttp://www.shibundo.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=4-7843-0304-3の編者なんですね。
もしここに挙がってない作家で載ってるか調べてほしい場合、コメント欄に書いていただければお調べいたしますよ。


内容としては、

  • 事典部分:予想以上に詳しい説明がされています。生年・代表作・受賞歴くらいで終わってるかもと思ってたら、ちゃんと文学史上の位置や、作品の詳しい内容まで、だいたい一人当たり半ページ〜1ページは費やしてます。新井素子だと、星新一のコメントや「あたしの中の…」「グリーン・レクイエム」のあらすじ、少女小説文体の基本となったこと、他メディアに広がっていったことなど、さらには2004年に「ブラックキャット」シリーズを完結したことまで! 松村栄子の項には「二〇歳までは自殺願望が強かった」とか書いてある…。ただ望みすぎかもしれないけどやっぱり事典なので、客観的な解説ばかりで、執筆者の思い入れや深く掘り下げた分析はなかなか全部の作家には(とくに最近の作家には)無いです。一応主要な作家には代表作の詳細な解説はついてるんですが。
  • おまけ部分・論考:「宮廷女房の横顔」「近世女性文学の概観」「女性作家とメディア」「女性雑誌にみるジェンダー概念の使用法」「少女小説の水脈」の5つ。まだ全然読んでないのでこれから読みます。事典としてこういうのを載せること自体が異例なのかもですが、それでももうすこし紙面を割いて欲しかったかも。
  • 日本女性文学年表:代表作の年表と当時の歴史。事典に載ってない作品も年表に載ってたりもします(2004ねんだと中島たい子とか山崎ナオコーラとか)。そして突然年表に他の部分にはほとんど登場しない「少女漫画」が!ただその選択があまりに恣意的なのがちょっと…(24年組ばっかりだったり、と思うと突然「月の子」とか出てきたり)
  • 収録作家生年・没年一覧:これ便利ですね。
  • 収録作家受賞一覧:各文学賞について、収録作家が受賞した回や作品が載ってるんですが、これ収録作家だけじゃなくて女性作家全部についてやればいいのにと思いました。なんか歯欠けのように見えます。せっかくコバルト・ノベル大賞の項まであるのに!
  • 書名・作品名索引:これも便利。
  • 人名索引:なぜ角田光代の項には(彩河杏)とあるのに岩井志麻子桐野夏生にはないのか(事典本文を見るとちゃんと昔のペンネームが載っているのに)不明。

全体的に、かなり良い本だと思います。女性文学・女性作家に興味がある方は持っていると楽しめるかと。資料としても素人観点ですがかなり使えると思いますし。ウィキペディアはてなキーワードでは物足りない方におすすめです。
またちゃんと読んだら感想を書くかもしれません。