麻生みこと『天然素材でいこう。』文庫版5巻46ページ15文字目のこと

新刊は鋭意製作中。5/1には告知を出せると思います。
麻生みこと『天然素材でいこう。』についてもういっこ。文庫5巻45-46ページ。幼少期、ひとり泣いていた千津に出会った高雄の回想。

紫陽花に 埋もれて 泣いてた少女
手を差し伸べると 泣き止んで
手に触れると 泣き出した

天素』中でも屈指のネームだけれど、2行目が「手を差し伸べると」なのに対して3行目、「手触れると」じゃなくて「手触れると」だ。頭や肩でなく「手に触れる」ためにはもう1つの条件が必要だ。つまり、2行目と3行目の間に、差し伸べられた手に千津自身が手を差し出した、という動きが挟まっている。(実際、そのコマの絵を見れば明白なことなんだけど)
ただ手を差し伸ばされ、その手にそのまま救われる、千津は(そして『天素』のすべての人物は)そういうありかたは決してしない。わたしたちのつながりは、2つの手が双方向から差し伸ばされてはじめて成立する。