「恋について語ってみようか」ささだあすか(ISBN:4592127382、ISBN:4592123484)

を「ラブロマ」(とよ田みのる)の流れで読み返してみました。これって95年前後の白泉社のラブストーリー少女漫画を原理のみ抽出したようなもので、例えば津田雅美彼氏彼女の事情」や麻生みこと「天然素材で行こう。」、猫山宮緒「今日もみんな元気です」あたりがこの流れなのでしょう。
「恋について語ってみようか」で(さらにはその後の氏の作品で)やろうとしているその「原理」はつまりは、恋愛の経過や感情を既にある他人や物語の体験、さらには(恋愛至上主義によって)規範化された恋愛体験(id:sayuk:20030911#p1で挙げられるような)に全く拠らずに、自分自身(キャラクター)の経た体験や思考や感覚のみで物語るということなのだと思う(例えば3話で、ヒロインが他の男に下の名前で呼ばれてるのに男の子がもやもやした感情を持つというのがあって、「規範化された恋愛体験」ならそれは即恋愛感情!ってなるんだけど「恋に〜」ではその推論を当然とせず、数段階の思考や感情を経る。同じ結論になったとしても、その思考や感情を辿り直す過程こそが重要なのだ)。「ラブロマ」にそういう意識があるかは分からないけど、既存の多くのラブストーリーで描かれる葛藤や困惑や行き違いを全部ショートカットして、感情と結果を最短距離に繋げるという描き方は実際としてそういう規範化された体験を排除しているのではないか。その辺をロマンチックラブイデオロギーの排除として考えることも出来るかも。