「魔法陣グルグル」衛藤ヒロユキ(3)

ひさしぶりに『魔法陣グルグル』について。
10巻の第88章からはじまる、ミュージカルっぽい仕立てに乗って戦うシーンは非常に唐突に見えるのだけれど、その前の81章「アラハビカの秘密」と一緒に考えると得心がゆく。それまで「魔物と人間がなかよく暮らすふしぎがいっぱいの町」として停滞し続けた場所は、実は「ネジを巻いたおもちゃ」でククリ自身の「夢の国(劇場)」だってことが露わにされてしまうのだけれど、その書割的な「夢」の世界を「現実」的に解体する手法はやはりid:sayuk:20031009#p1で言う「岡崎的」なものになってしまう。芝居的な世界を芝居的に解体すること、夢から夢的に「目覚める」ことこそがグルグル的手法で、そうするとあのミュージカルシーンの唐突さは圧倒的に正しい。夢=オンナコドモ世界と現実の階級差なんておそらく衛藤ヒロユキは信じていないのだけれど、例えば僕が『涼宮ハルヒの溜息』に共感できないのも、夢想と現実に階級差を付けてしまうその手付きじゃないだろうか。
こういう議論ってもしかしたら読者にはほとんど当然の事実なのかもしれないけれど、いまだにグルグルをBSマンガ夜話で取り上げてくれないのでしょうがないです。