「よつばと!」あずまきよひこ(再読)/「季節の記憶」保坂和志

よつばと!」1巻を再読したら、前読んでた時飛ばしていた(湿度が高くてページがくっついてたのか)部分があってびっくり。具体的には22-23、30-31、54-57P。それを考えると「よつばと!」の特徴は、1コマ1コマや1エピソードが他のコマやエピソードに強く繋がっていない所かもしれない。実際読んでいると微妙にコマの繋がり方が変だったり、コマが「余って」たりするように感じるのは、全てのコマやすべての台詞が1つの作品の中で必然的な意味を持つような他の多くの漫画と比べると異質で、下手な前衛的な漫画より「よつばと!」はずっとあたらしく思えたり。
それで思い出すのが保坂和志「季節の記憶」(ISBN:4122034973)で、父子(父が文筆業、子が幼稚園くらい)とお隣さんって構成も似ているのだけど、保坂氏の作品は他のでもいくつかの会話やエピソード、思考が作品の筋に関わってなくて、もっと言えば会話や思考が物語に隷属していない江國香織にもそういう所があるかも)。ふとそれぞれが始まって、それぞれによって中断される。それでいながら、それぞれの会話や思考が齎すものは水槽に水を入れるように少しずつ蓄積されていって、ある時点で静かに溢れ出す。「よつばと!」の場合は思考がないというか、やはり珍しいことにモノローグがほとんどない作品(「なるたる」みたい)なんだけど、それは漫画が長い思考を描くのに不得手な表現だから、逆にばっさりと切り捨てることで読者の側に思考を委ねているのかもしれない。