レイト・ライオットガールとギターポップ

love kiss kaiさん(11/28)でriot grrrlの話題で捕捉されていました。僕が知っているのも同じサイトで言及されていたCatch That Beat!さんのこちらの記事くらいのことしかない(というかこれって、id:sayuk:20031107#p1で触れたファンジンに載ってたのと同じものですね)ので非常に恐縮です。
そのつたない自分の知識で書くと、riot grrrl(ライオット・ガールと読む)というのは男性中心主義的だったロックシーンに抗する動きで、つまりは「女にロックのことなんか分かるか!」みたいな意識への反発だったんじゃないかという印象があります(間違ってたらごめんなさい)。ロックという、各種メディアの中で最も「自由と平等」に近いと思われていた分野に含まれる抑圧みたいなのを見出したという点でもこの動きは大きかったんじゃないかと思う。これも誰かの言っていたことだけど、そもそもロックミュージシャンやバンドの中での男女比率の違いというのも考えるべき問題で、かつては(「女性バンド」という枠を除くと)バンドの中の女性メンバーと言うとほとんどがボーカルで、紅一点のアイドル的な存在だった(id:sayuk:20030902#p1で挙げたbisのマンダ・リンの言葉だったかも)。日本だと、例えば嶺川貴子がドラムスでいた頃のL⇔Rなんかはまだ珍しかったほうで、彼女自身も「なぜボーカルやらないの?」としつこく訊かれて困惑したみたいなことを言っていたような気がする。あとはBRIDGEの6人で男女3人というのも珍しかったのかも? その後pre-schoolSUPERCARNUMBER GIRLズボンズと「ボーカルでない」女性メンバーというのは少しずつ増えていったのだけれど、そういう状況の変化も「ライオット・ガール」的な成果といえば言えるのかも。
BRIDGEやL⇔R、それからCatch That Beat!の池田弥生さんなんかも音楽的なジャンルとしてはギターポップネオアコ、レイトアノラックといった系統の周辺にいて、僕自身がBIKINI KILLとかの名前を知ったのもそういう繋がりだし、日本でのriot grrrlのムーブメントは(もしあるとしたら)その辺りで起こっていたんじゃないかと思うのだけれどどうなのでしょうか。SUNNYCHARを皮切りに、例えばレイトアノラックのシーンはヨシノモモコ、ヒトミ&カナコ(dizzy johgurt ASIN:B00005JYYO)、ウスイトモミ(red go-cart ASIN:B00005G39Z)の3人が中心だった(って米国音楽には書いてあった!)し、ライブイベントもファンジンも女性主催のものが多かった。90年代後半のギターポップ・レイトアノラックはそういう所の面白さもあったはず。
ギターポップとライオット・ガールの親和性は、これもやっぱり推測なのだけれど、ライオット・ガールのフェミニズム的な思想が第2波フェミニズム的な認識に近い、社会構造におけるさまざまなジェンダー的なもの(例えば資本主義の男性原理とか)への反発(特にその中でも音楽業界に関係するもの)と、ちょうどギターポップというジャンルの上でリンクしたからなんじゃないかと思う。具体的には、

  1. 商業主義音楽とインディーズレーベル(D.I.Y.的な)との対立
  2. ハイファイ、テクニック至高主義とローファイとの対立
  3. 大都市音楽シーンと地方音楽シーンの対立

やっぱりあまり詳しくないのでよく分からないけど、Beat Happening(ASIN:B000003RLY)とかを出してるKレーベルなんかはまさに1〜3に当てはまるもので、ギターポップとインディーレーベル、リリースもライブも批評(ファンジンでの)もすべて自分たちの手作りでやる、という思想は切っても切れない仲だし、演奏的な上手さやアレンジの高度さを求めないというのはやっぱりBeat HappeningからTiger Shovel Nose(id:sayuk:20031121#p1)あたりに通ずるもの。Kレーベルが中心となったオリンピア・ミュージックシーン(に関する連載が「米国音楽」という雑誌にあったのです)も、dizzy johgurtが宇都宮をそしてred go-cartが仙台を活動拠点といていたのも、大都市を音楽的な中心地とする思想へのアンチテーゼだったのでは。(個人的には、Tallular Gosh ASIN:B000003RNY Trap ASIN:B000003RMD grrrlの範疇に入れちゃってるのだけど間違い??)
ライオット・ガール的な思想が自分のよく聴いていたギターポップ系の音楽と親和性が高いというのはこうやって考えると納得が行くのだけれど、当時はそんなに考えたことはなくて、だからid:sayuk:20031107#p1では上手く書けなかったけど池田弥生さんのコラムは非常な驚きだった。僕がフェミニズムのこととか考え始めたのは高校生の頃、水人蔦楽id:sayuk:20030924#p2)さんの漫画を読んでからで、でもその後数年間はあまりそのことを考えていなかったのだけれど、こういう所で繋がるのかとびっくりしたのだと思う。